わやくの部屋

UNICORN 2 -Lesson 8

Global Water Issues
世界の水問題

Section 1

人類も含めてすべての生き物は、生きるために水を必要とします。利用できる水を適切に供給することは、私たちの健康と幸福にとって必要不可欠です。

私たちの惑星は「青い惑星」です。水はいわゆる閉じた水文循環の中で流れて(→循環して)います(図1)。実際に、地球上にある水の総量は数百万年以上、変化していません。それでもなお、水不足がますます増えているとよく言われます。どのようにして数十年以内に、水不足が地球規模の問題になりうるのでしょうか?

よくある説明は、地球がどんなに水が豊富であろうとも、わずか2.5%しか真水はないというものです。真水のほとんどは、氷河や深い地下水としてたくわえられています。ほんの少しの量の水しか簡単には使えないのです。この答えは部分的にしか正しくありません。水の循環を見ると、水を利用できる適切な量は年間流出量の45,500km³だということが分かります。この年間流出量は、陸地から主に川を通って海に流れます(図1、2)。

言い換えれば、他のほとんどの天然資源とは違って、水は川から自然に流れて、定期的なペースで補充されています。対照的に、地下水の帯水層は、とてもゆっくりとしか水(の供給)を補充しないのです。もし農作物を育てるためや、他の目的のために帯水層がひどく使われたなら、帯水層には実質上、水がなくなる可能性があります。

Section 2

いわゆるRFWR(再生可能な水資源)のうち年間約3,800km³が、今のところ人類によって取水され(→使われ)ています。これは世界の最大利用可能なRFWRの10%未満を占めるだけです。それでは、なぜ水不足を心配すべきなのでしょうか? 1つの理由は、水資源の利用可能度が時期によって大きく変化する(→季節・年によってどのくらいの水を使えるのか大きく変わる)からです。雨季の間の(水の))流れは、流量の少ない季節には使うことができません。このため、作れる場所ならどこにでも作られた、何百万もの人造湖やため池があり、主要な河川の流れはたいてい制御されています。こうした人の手による(水の)貯蔵の総容量は、年間取水量の約2倍の7,200km³だと見積もられています。

もう1つの理由は、RFWRがその分布において均一ではない(→RFWRの分布が一様ではない)からです。RFWRはある特定の地域に閉じ込められている(→集中している)のです。すなわち、(RFWRの)量は砂漠地帯のほとんどゼロから、熱帯地方の流れ出る雨水が年間2,000mm以上まで、また、アマゾン川の河口付近の平均流出量毎秒20万m³以上まで大きく変化するのです。さらに、(人間が生活したり、生産活動をするために水を使うだけではなく)生態系を健全に維持するための水の需要は満たされる(→しっかりと確保される)べきなのです。

渇水指標(Rws)はRFWRに対する取水量の割合として定義されます。Rwsが0.4よりも高い場合には、ある地域は普通、水不足が深刻だと見なされます。すべてのRFWRを利用することは、今のところ不可能ですから、0.4は合理的だと見なされている数値です。

Section 3

Rwsは世界のいくつかの地域ではとても高く(図3)、約24億人が水不足に苦しんでいます。飲み水への需要が1人1日数Lに限られていて、国際貿易を通してあるいは海水淡水化によって満たされるにもかかわらず(=使用量の少ない飲み水は何としてでも確保できるとしても)、他の(飲料水以外の用途の)家庭、工業、農業への水の需要はずっとたくさんの水を要求します。そして、こうした部門への価格は合理的なもの(=それほど高くないもの)でなければなりません。タンカーや他のエネルギーを使う方法での水の輸送は現実的ではありません。

その一方で、乾燥地域で食べ物を育てるための水の需要と工業生産のための水の需要は、商品の輸入によって埋め合わせることができます。こうした貿易は「仮想水貿易」と呼ばれます(図4)。取引された商品の重さは、通常は、そうした商品を作るために必要とされる水の重さの100分の1~1000分の1です。例えば、たくさんの水が家禽類のための作物(→家畜の飼料用作物)を育てるために使われます。100gの牛肉を手に入れるためには、2m³近い水が必要です。牛肉を100g食べるときには、2m³もの仮想水を消費しているのです(図5)。つまり、商品を運ぶのは、水そのものを運ぶのよりもずっと簡単なのです。国際間の「仮想水貿易」の合計は、年間2,320km³になると見積もられています。これ(=「仮想水貿易」により国と国の間を行き来するという年間2,320km³という水の量)が水不足を部分的に埋め合わせています。

Section 4

少なくとも(今後)数十年の間は、地球の人口は確実に伸びていき、水の需要は結果として増え(続け)るでしょう。世界の取水量の3分の2を使っていると推定されている農業部門では、1961年から2004年の期間で、単位面積当たりの収穫量は2.3倍に増えました。これは2.0倍の人口増加率を上回っています。この伸びは、大いに灌漑における倍増のおかげ(→農業に使う水の量が2倍に増えたおかげ)でした。1人当たりの家庭内での水の使用量は、GDPの伸びとともに増加しています。しかし、多くの先進国では、この増加は止まったように思えます。工業用水もGDPとともに増えてきていますが、再利用技術が工場への正味取水量を減らしてきています。例えば、日本の工業部門で使われる水の80%近くが、今では再利用されています(図6)。

灌漑用(=農業用)の取水量を、今後数十年で必要に応じて増やすことはできないという、みんなが共有する心配があるにもかかわらず、途上国は取水量を増やす可能性を秘めています。途上国の現在のRwsは、一般的にとても低いからです。供給を増やし、賢明に需要をこなしていくために、途上国にとっての主な課題は、技術援助に加えて、適切な法規制、政策、市場原理を導入する方法になるはずです。