わやくの部屋

UNICORN 2 -Lesson 5

The Boy Who Harnessed the Wind
風から電気を取り出した少年

Section 1

ある日、図書館で1冊の本が棚の奥に押し込まれて、ちょっと見えなくなっているのに気づきました。『エネルギーを使う』という題のアメリカの教科書(→本)でした。表紙には、てっぺんに3枚の羽根を付けた高い白いタワーが大きくとりあげられていました。その本を開きました。
 
 本には「エネルギーはいつでも君たちの身の回りにあります」と書いてあり、一か所に集められた(何機もの)風力発電機が風を動力源とする羽根によって、発電所と同じくらいたくさんの電気を作る方法が説明してありました。「これだ!」と思いました。自転車の半分壊れた発電機を使って、いとこのジェフリーと実験をしたことが、以前、あったのを思い出しました。(その時は)発電機をラジオにつないで、自転車のペダルを2人でこぎました。そうすると、ラジオが鳴り始めました。

 でも2人のうち1人しか音楽に合わせて踊れませんでした――残りの1人はペダルをこぎ続けなければいけなかったからです。その時(図書館で本を見ているとき)、ひらめいたんです――「そうだ、もちろん、自転車をこぐのは風だ!」 風が羽根を回し、発電機の磁石を回転させ、電気を作るんだと理解しました。

 (当時)マラウイの人のわずか2%しか電気を持っていませんでした。電気があれば、夜起きていられただけではなく、トウモロコシ畑に水をくみ上げることもできたことでしょう。もうこれ以上朝食を抜かしたり、学校を中退することもありません。

Section 2

風車を作るのが)どんなに難しいことかなんて知らないまま、自分の風車を作るんだと決心しました。道具は何もありませんでした。ドリルのような道具すらなく、ドリルはクギとトウモロコシの穂で作りました。我流の新しいドリルとその他の発明した(→自分で編み出した)道具で、カセットプレーヤーの小さなモーターを使うモデル(試作品)を開発しようとしました。最初に、羽根に使えそうな空っぽのプラスチックケースを手に入れました。ケースの底を取り外して、(4つの)側面を4枚の細長い切れに(→4枚に細長く)切りました。そして、その4枚を扇形に広げて羽根にしました。

 計画をジェフリー話しました。話を聞くとすごく興奮してくれました。分厚いゴムが必要でしたが、マラウイの女の人たちが履き古した靴の底から(少し)手に入れられることは知っていました。ジェフリーと一緒に古い靴を探して、ゴミ捨て場をくまなく探しました。ひどく長い間、周りを掘り返して、ジェフリーがやっと片方の靴を(高く)持ち上げました(→片方の靴を持ち上げ、「獲ったど~」と言いました)。

 何回か試した挙句、やっと、モデル(試作品)を完成しました。ジェフリーが手で羽根を回しながら、僕はモーターの2本の電線を手に取り、舌に触れさせました。「何か感じる?」ってジェフリーが聞きました。「ああ、ピリピリするよ」って答えました。

 ジェフリーのラジオにその機械(発電機)をつなぐと突然、音楽が鳴り響きました!

Section 3

今や、もっと大きな風車を計画するときでした。しかし、必要な材料を何一つとして持っていませんでしたし、材料を買うお金もありませんでした。(仕方なく)トレジャー・ハンターになりました。通っていたカチョコロ学校から(道路を隔てて)ちょうど向かい側にあったスクラップ置き場を探し歩きました。そこは機械の部品や車の車体で一杯だと気づきました。「(ついに)金を掘り当てたぞ」と思いました。

 しかし、学校の方からやる気をなくさせるような言葉を何度も聞きました。両手に宝物を持って帰っていると、生徒がこう大声で浴びせかけたものでした。「見ろよ、ウイリアムだぜ。あいつまた、ゴミを掘り返してるぞ(→あさってるんだ)!」 この子たちは僕の話を聞きもせず、嘲り笑うのでした。それでも(めげずに)スクラップ置き場に通って、風車の部品を探し続けました。

 僕はラッキーでした。というのも、最初から、必要な一番大きな部品のうちの一つがうちの屋根のすぐ下で手に入ったからです。どうしたわけか、父さんが1台の古い自転車、いやもっと的確に言うと自転車の残骸を取って置いたのです。車輪は1つだけで、ハンドルのとれた錆びついた車体の自転車の残骸でした。ひょっとすると1時間くらいでしょうか、このポンコツがスッゴク必要なんだと父さんに話しました。やっとのこと、父さんはわかってくれました。集めていたモノ全部で(→全部が一緒になって)、僕の部屋がスクラップ置き場そのもののように見えるのに長くはかかりませんでした。

Section 4

スッゴク必要だった最後の部品は発電機でした。でも、子供のころからの友達だったギルバートに大きな支援を見つけられて(→ギルバートの多大な援助が得られて→ギルバートが救ってくれて)、またしてもラッキーでした。ある晩、2人で家に歩いていると、自転車を押して、通り過ぎる人がいました。タイヤのそばにある見慣れた輝き(自転車のライトのこと)に気づきました。ギルバートはその人に発電機をいくらなら譲ってくれるかと聞きました。当時、お金を断るようなお馬鹿は一人もいませんでした。「200クワチャでどう? 電球付きだよ。」とその人は言いました。ギルバートの家はうちと同じで、貧乏だって知っていました。でも、黙って200クワチャ(=日本円で50円ちょっと)払ってくれました。

 部屋まで走って帰って、他の材料の隣に発電機を置きました。自分の人生の大きなパズルに最後のピースをはめ込むような感じでした。

 全部の部品を組立ましたが、まだやるべきことがたくさんありました。ジェフリーとギルバートが手伝ってくれました。森で木を何本か切り倒し、それで丈夫なタワーを作りました。もう一つの難しい作業は新しく作られた機械をそのタワーに取り付けることでした。長い間、悪戦苦闘して、やっと何とか機械をタワーのてっぺんに持ち上げ、固定できました。計画全体が2人の協力がなかったら実現しなかったことでしょう。

Section 5

準備は終わりました。意外にもたくさんの人が僕たちの実験(「試み、挑戦」でもオッケーです)を見るために集まってくれました。何か月も僕をからかってた子たちもその中にいて、依然として笑っていました。
 
 突然の強い風が安定した風に変わりました。ストッパーを外すと、羽根と腕木は回り始めました。最初はゆっくりと、そして次第に速く回りました。「さあ、その調子だ。いいぞ!」と思いました。ちょうどその時でした、強い風が吹きつけて、羽根はまさに命を吹き返したのです。手にしていた電球が1度点滅しました。最初は、一瞬の輝きでしたが、それから明るくともり続けました。

 「電気の風だ!」と叫びました。一人また一人と、集まった人たちは喜びの声を上げ始めました。「やったじゃないか、ウイリアム!」と叫びながら。

 でも、満足はしていませんでした。家に明かりがほしかったのです。何日かして、長い電線で機械(→風車の発電機)と僕の部屋の電球をつなぎました。その夜は、ベッドで横になって、じっと電球を見上げてました。外で羽根がキーキー音を立てる中、電球は黄色く明滅していました。

 寝ないで起きてて、次の段階の準備をしながら、物理の本をパラパラめくりました。暖かい光が本のページを彩り、外から入ってくる赤茶けた、もうもうとした埃の中で輝いていました。