わやくの部屋

UNICORN 1 -Lesson 4

Forests for the Future
将来のための森

Section 1

1本の巨大な木が地面に横たわっています。強いサイクロンのさなかに根元から裂けました。この木は30番と呼ばれるバオバブの木で、マダガスカル西部にあるバオバブ並木に沿って立っていました。樹齢1,000年を超えて生きるバオバブもありますが、30番は200年しか並木にありませんでした。実際に、バオバブ並木周辺のたくさんのバオバブは今、危険な状態にあります。

かつてバオバブの木は深い森の中にありました。森林の大部分が耕作のために焼き払われる一方で、バオバブの木はそうした火事を生き延びました。バオバブの木には幹に水を蓄えることを可能にする(→蓄えておける)分厚い樹皮があります。しかし、生き延びてきているバオバブの木のうちの多くは根腐れに苦しんでいます。農民が作物を育てるためにたくさんの水を使うからです。さらに、屋根やロープや薬を作るためにバオバブの木からたくさんの樹皮をはぎとってきています。

こうした傷ついたバオバブの木は、森がなければ、もはやサイクロンに耐えられません。バオバブの木の命はまさに森に頼っているのです。

Section 2

数匹(→2匹)のシファカがマダガスカル南部の小さな森から出てきます。バランスをとるために両腕を使って、横向きに跳ねます。この動きはユーモラスに見えますが、シファカがそんな動きをするのは自然ではありません。

生まれつき、シファカは地面を歩くのではなく、木から木へと跳んで移動します。しかし、小さな森は周りを取り囲んでいるサイザル麻の農園によって(→サイザル麻の農園に周りを取り囲まれて)今や孤立しています。それで、シファカは他の森に到着するために木を通って移動できないのです。サイザル麻は「環境にやさしい作物」として知られていますが、シファカにはやさしくないのです。森の消失はバオバブの木にだけではなく、野生動物にも強い影響力を持っているのです。

マダガスカルは、この島固有の動植物たちにとって楽園だった原始の(手つかずの)森に覆われていたものでした。森林地帯は近年急速に減少し続けていて、今では森林面積は島全体の10%未満です。

Section 3

マダガスカルの人口はここ25年で倍になってきていて、今では2,000万人を超えています。マダガスカルは人口(→国民)の60%が1日1ドル未満で生活している国です。人々は生計を立てるためにますます多くの木を切って売ります。マダガスカルの人口は増え続けていますが、その一方で木の数は減り続けています。

この状況を改善するために、NGOや地元の人たちが数件の森林再生事業を始めています。原始の森と村の間に緩衝地帯を作るために一緒になって活動しています。ある村人は「村の周りに生活のために使える木を植えれば、原始の森を切り倒す必要はなくなるでしょう」と語っています。

NGOは他にも、新しい木を植えたり、原始の森を昔のような姿に修復するために原始の森の残っている小さな土地をつないだりし始めています。この試みのおかげで野生動物がずっと広い生息地で自由に移動できるでしょう。その上、この努力は地元の人に仕事を与えるという側面も持っています。

 【 無生物主語の文の訳し方 ① 】
§3の最後から2番目の文が無生物主語の文です。

This attempt will allow wildlife to move freely in much larger habitats.

無生物主語 ( This attempt ) は副詞的に(その多くは目的・理由・原因を表すように)訳すことになっています。すなわち、プラス・イメージであれば「~のおかげで……」、マイナス・イメージであれば「~のせいで……」のように訳しましょう。本文を直訳して、「この試みは野生動物たちがずっと広い生息地で自由に移動することを許すでしょう」とするのは避けましょう(実際に紙に書く時=和訳モードの時のことですが)。和訳しない時、ただ英文を読み進めていって内容をつかむような時には、直訳モードでどんどん読み進めていってオッケーです。日本語に直す時(和訳モードの時)には、副詞的に訳すということに、今から慣れておきましょう。

Section 4

日本のNGOがマダガスカルでの森林再生事業に参加しています。目標は、外来種の植物を在来種の植物に取りかえることで元あった森林を取り戻すことです。1991年からメンバーは12万本を超える植林を行っています。2008年には地元の子供たちと一緒になって木を植え始めました。子供たちがこの事業に喜んで応じてくれて、NGOのメンバーは喜んでいます。このNGOのリーダーは「今、私たちが行っていることは、速度を上げている車のブレーキを軽く踏むようなものです。でもこれでも何もしないよりはましなんです」と話しています。こうした努力が実を結びつつあります。

【写真の説明文】 地元の子供たちと先生が、朝日の中を歩いています。マダガスカル原産の植物を運んでいる子もいます。

3本のバオバブの木がある丘に、ついに到着します。そのバオバブの木の周りに森を再生するために、苗を植えるのです。先生はみんなにこう話します。「森から何を受け取っているのかな? 森は生活をもっと幸せにしてくれるものをくれるんだ。この木を植えるのは僕たちの将来のためなんだよ。」