中納言参り給ひて

現代語訳

(藤原)隆家がいらっしゃって、中宮様に扇を献上されるときに、

「私、隆家は、素晴らしい骨を手に入れました。その骨に紙を張ってさしあげようと思うのですが、とても並大抵の紙を張るわけにはいかないだろうと思い、それ相応の紙を探しているところです。」

とおっしゃる。中宮様が

「その骨はどれほどの物なのか」

と藤原隆家にお聞きなさると、隆家は

「すべてが素晴らしいです。他の者が『今まで見たことのない骨の様子です。』と申します。本当に、これほどの物は見たことがありません。」

と超え高々におっしゃいます。

「それでは、扇の骨ではなくて、くらげの骨のようですね。」

と私が言ってみると

「それはこの隆家が言ったことにしましょう。」

と言って笑っていらっしゃる。このようなことはきまりが悪いことの中に加えてしまうべきだけれども、

「1つも書き漏らさないで」

と人々が私におっしゃるので、どうしたものでしょうか。