わやくの部屋

PRO-VISION 1 -Lesson 6

Old but New
古いけど新しい

Do not seek to follow in the footsteps of the people of the past; seek what they sought. ―― Basho
古人の跡を求めず、古人の求めたるところを求めよ。 ――芭蕉

Section 1

風呂敷とは何でしょうか? ただ単に真四角な布にすぎませんが、たくさんの方法で使われること意図されています。いろんな風に折りたたんだり、結んだりすることで、丸いもの、四角いもの、長いもの、幅のあるものなど、すべての形のものを運ぶのにとても便利なバッグを作れます。風呂敷を広げれば、もう一度使う準備ができています。使わない時には折りたたんで運べます。

風呂敷のデザインや、風呂敷を作るのにつかわれる布の種類はここ数年で改良され、ファッショナブルになっています。若い人たちは現代の風呂敷の魅力を素早く理解しました。今では若い人たちは、ビニール袋の代わりの「エコバッグ」として、肩にかけて運べるノートパソコンの包みとして、ヘアーバンドとして、あるいは部屋の飾りとして風呂敷を使っています。現代のライフスタイルによく合った、新しい風呂敷の使い方が次から次へと現れています。

Section 2

風呂敷は日本で人気があるだけではありません。風呂敷の美しさと同じように、風呂敷のコンセプトは今では世界中で知られています。

オランダのデザイナーは、1枚の風呂敷がたくさんの違った方法で使えるという考えに触発されました。その女性デザイナーは持ち運びたいものに応じて大きさを変えられるバッグを作りました。

イギリス政府は過剰包装という国民的な問題に対処する方法をあれこれ考え、風呂敷の環境に優しい考えに注意深い眼差しを向けました。政府はクリスマスプレゼントを包む紙やリボンの代わりに風呂敷を使うよう国民に勧める運動を行いました。

2004年にノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんは、日本滞在中に「もったいない」という考えに心を打たれました。風呂敷に注意深く包まれた贈り物を手渡され、モノを大切にするという日本(人)の心を学びました。

風呂敷はもはや日本特有のものではありません。この伝統的なものを包む方法を通じて、世界中の人たちは今や資源を守る新しい方法を発見しつつあります。

Section 3

風呂敷の歴史は室町時代にさかのぼります。「風呂敷」という言葉はもともと「お風呂で敷く布」を意味していました。大名たちはお風呂に入る前に、1枚の布に着物を包んだものでした。お風呂の後、着物を着ている間に、床に布を広げその上に立ったものでした(→お風呂の後、床に布を広げ、その上に立って、着物を着たものでした)。

江戸時代には銭湯に行く風習が庶民の間にも広まり始め、銭湯の行き帰りに着物やその他のものを運ぶために風呂敷を使いました。このようにして風呂敷は庶民の生活の日常の一部になりました。

19世紀後半からは風呂敷は贈り物としても人気になりました。風呂敷の年間生産量は1970年代までには約1億枚に達しました。しかし、時代の変化とともに、風呂敷を使う習慣はなくなり始めました。日本は高度経済成長を経験し、国民はさらに西洋化した生活様式への願望を強めました。ビニールや紙の袋がスーパーやデパートで使われ始めました。新しい使い捨て文化の中で、日本人は「もったいない」の精神を忘れ始めました。

Section 4

今後、世界の人口は増え続けると予測されています。経済成長と地球を守ることを両立させる「持続可能な開発」の時代がやって来ています。

21世紀の始まりから、世界中の人は、環境を守るのに役立つ3つの方法の大切さを学びつつあります。3つのRとして知られている方法――Reuse(再利用)、Reduce(削減)、Recycle(再生利用)の最初の1文字です。ここに、同じように文字Rで始まるもう一つの考えを風呂敷が思い出させてくれます――ものへのRespect(尊敬)です。

ご先祖様たちは、生活の中でいつもものを大切にしていました。日本の限られた国土と資源を十分に活用しました。風呂敷は過去からのずっと続いてきた知恵の一例にすぎませんが、今日の環境問題を解決するのに役立つ鍵を与えてくれる可能性があります。価値のある伝統を生かし続け、あらゆる地域(→世界中)の人たちとこの伝統を共有するべきです。このようにして今日の知恵を将来の世代に受け渡していくことができます。