わやくの部屋

PRO-VISION 1 -Lesson 3

The Sky's Your Only Limit

Section 1

12歳のキャサリン・スウィッツァーは、家族とともに夕食をとっていました。

「私はチアリーダーになりたい。」と彼女は言いました。

彼女は単純に、チアリーダーになれば男子の間で人気者になれると思っていました。

「そうだね、それも楽しいだろうが、おまえはランニングのようなスポーツをするのが好きだね。なぜ傍観する側にいたいの?おまえがスポーツをしてみんなに応援してもらうべきだよ。おまえの学校には女子のフィールドホッケーチームがあるよね。」と父親は答えました。

「ええ、あるけど、競技のしかたがわからないの。」

「それは問題ではない。そのチームでプレーできるよう、まず体力をつけなくてはいけない。一日1マイル走ってみたらどうだろうかな?」

キャサリンは男子ができることなら何でもできると思っていました。

そして翌日から走りはじめることにしました。毎日走ることで、彼女にはとても体力がつきました。

ランニングはキャサリンの秘密兵器になりつつあったのです。

Section 2

キャサリンは1966年にシラキュース大学に入学しました。

彼女はランニングを続けることを望んでいましたが、大学には女子のランニングチームはありませんでした。

キャサリンは男子クロスカントリー・チームのコーチ、アーニー・ブリッグズに会いに行き、チームに入ることができないかと尋ねました。

彼女の依頼に彼は驚きましたが、その決意に心を動かされました。

それで、彼は彼女が男子といっしょに走ることを許すことにしました。

アーニーはボストンマラソンを15回走っていました。

キャサリンは彼の話を聞いて、自分もボストンマラソンを走りたいと熱望するようになりました。

しかし、一つ大きな問題がありました。

男性のランナーしか走ることを許されていなかったのです。

当時人びとは、女性にはフルマラソンを走り切るだけの十分な体力がないと考えていました。

キャサリンが26.2マイル(約42.195km)走れると確信を持てるまで、アーニーとキャサリンは厳しい練習を続けました。

キャサリンが1967年のレースで走るために申し込んだとき、彼女は自分の名前をK.V.スウィッツァーと書きました。

彼女はアーニーと友人のトムといっしょにランナーとして出場することが認められました。

Section 3

雪の中、レースが始まりました。

一人のカメラマンがキャサリンに気づき、「おい、261番は女だぞ!」と叫びました。

すべてのカメラマンがキャサリンの写真を撮りはじめました。

レース関係者の一人であるジョック・センプルは、彼女に気づくとその後を走って追いかけました。

彼は彼女の肩をつかんで自分の方に向かせ、「レースから出ていけ、そしてそのゼッケンを返せ!」と怒鳴りました。

キャサリンは逃げようとしましたが、彼は彼女のシャツをしっかりとつかんでいました。

そのとき、体重が235ポンドあるトムがジョックに体当たりして、ジョックは吹っ飛びました。

キャサリンはあまりのショックで、どうしたらよいかわからなくなっていました。

「行け、キャサリン、行くんだ!」とアーニーが叫びました。

キャサリンは我に返り、走り続けました。

彼女は4時間20分でゴールしましたが、彼女のタイムは「非公式」と記録されました。

彼女はボストンマラソンに出て走っただけでなく、完走もしました。

キャサリンの偉業は大きなニュースとなり、国民的な議論が始まりました。

人びとは「マラソンから女性を締め出すな!」と言いはじめました。

Section 4

キャサリンは、この経験の後、スポーツをする女性を助けようと決心しました。

彼女はほかの女性が同じような扱いを二度と経験しなくてすむようにしたかったのです。

アーニーとキャサリンは陸上競技クラブを結成し、女性たちに入会を勧めました。

キャサリンは女性のマラソン大会を始めたり、女性用のランニングシューズの開発を手助けしたりして、スポーツをする女性の権利のために一生懸命働きました。

1972年にようやく初めて女性が公式にボストンマラソンで走ることが認められました。

キャサリンは「やっと私たちはアスリートになれた。」と言いました。

彼女は自分に特別な才能があると思っていませんでしたが、アスリートになることができました。

彼女は、ほかの多くの女性も同じことができると信じていました。

「私はとても幸運でした。私の両親とアーニーが、したいと思うことなら何でもできると教えてくれたからです」

しかし、彼女は、そうした支援を得ずに育った女性が多くいることを知っていたので、その人たちを勇気づけることを強く望んだのです。

「必要なのは、自分自身を信じて、前に一歩足を踏み出す勇気だけです。可能性は無限です!」