わやくの部屋

ELEMENT 3 -Lesson 3

Section 1

ほんの少しのことだけが、君を野生にいる大型類人猿に会うために準備させます(→野生に生息する大型類人猿に出会うために、準備することはほとんどありません)。動物たちに対して感傷的になるのはとても簡単です。しかし、たとえ簡単ではあっても、ボルネオの熱帯雨林の中を2・3時間、つらい思いをして歩いた後で、頭上高くに1頭の類人猿を初めて目に出来て、驚いて私たちは黙りました(→驚きのあまり言葉が出ませんでした)。というのは、ここ自然の生息地に森の驚異の人オランウータンがいたからです。完全に野生で、まったく人間に慣れていなくて、私たちの存在に気づいていても興味を示さないまま、その巨大な類人猿は、体操の選手のように木から木へとゆっくりと飛び移るのでした。ボルネオの真ん中にいると、自然を支配することなんてできないし、破壊なんてできないように思えます。実際に、自然がチョウのハネと同じくらい壊れやすいということを、忘れてしまうのはとてもたやすいことです。

Section 2

新しく出された国際連合環境計画報告書『オランウータンの最後の抵抗』は、2020年代の初めまでに、ボルネオとスマトラの広大な熱帯雨林は、消失しているだろうと主張しています。このことは、野生のオランウータンの確実な絶滅(→野生のオランウータンが確実に絶滅すること)を意味しています。野生のオランウータンの数は、ここ20年ですでに減少してきています。そして、この厳しい破壊(=絶滅)の原因は何なのでしょうか? 大部分は、最後に残っている生息地から追い出すことによって、こうした類人猿を殺しているのは、ヤシ油のプランテーション農園の急激な増加に他ならない、と先の報告書は主張しています(→先の国連の報告書の主張によると、大部分は、ヤシ油のプランテーション農園が急に増えているせいで、こうした類人猿は最後に残っている生息地から追い出され、死んでいるのです)。ヤシ油によってもたらされる脅威に気づいている人はほとんどいません。ヤシ油がこれほどまでに人気の製品になっている主な理由の1つは、環境に優しい代替燃料資源として使われる機会が増えているからです。確かに、環境保護に熱心な人たちによれば、ヤシ油は地球温暖化を食い止めることによって、世界を救うのに役立つ可能性もあります。しかし、そうすることで、地球上で一番愛されている種のうちの1つを絶滅させてしまう危険があります。

Section 3

ヤシ油はアフリカアブラヤシの果実から採られます。ヤシ油は何世紀もの間、西アフリカの調理に使われてきていますし、もっと最近では工業目的に広く使われてきています。実際に、イギリスの産業革命の大きなエンジンの中には、西アフリカ産のヤシ油で動いていたものがありました。しかも、ヤシ油は石鹸の製造にも使われます。20世紀の間、ヤシ油の使用は徐々に減少しましたが、最近になって、再び人気が出始めています。イギリスでは、ヤシ油は石鹸から口紅に至るまで、(また)マーガリンからすべての種類の調理済みの食事に至るまですべての中に入っている原料として使われています。ヤシ油の起源がアフリカにあるにもかかわらず、今日の世界のヤシ油のほとんどは、マレーシアとインドネシア、特にボルネオとスマトラの広大な熱帯の2つの島からやって来ています。

Section 4

多くの人にとって、これはいいことです。ヤシ油は世界の貧しい人たちに貴重な収入をもたらします。ヤシ油は健康にもいいのですが、しかし、ヤシ油が世界中の注目の的になっているのは、地球温暖化と闘うヤシ油の可能性のおかげに他なりません。また、ヤシ油は、植物由来の燃料を作るのに必要な原材料を含んでいます。(植物由来の燃料は)地球温暖化の一因にならないと信じている環境意識の高い、車を運転する人たちによってもう既に使われています。このようにして、ヤシ油は食べ物では健康的な材料ですし、環境に優しい燃料資源でもあります。何が問題だというのでしょうか? では、ボルネオをほんのちょっとだけ訪問してみましょう。そうすれば、この疑問に対する答えがわかることでしょう。

Section 5

私たちがオランウータンを目撃できたことはとても幸運でした。しかし、私たちは、2・3日ボートに乗って離れたところにあるボルネオ島の他の側面(=負の側面)も見ました。これは、人間が自然に挑む壮大な戦いの始まりです。熱帯雨林が破壊され、荒れ地に取って代わられています。森林破壊が進行中なのです。どんどん悪くなっています。伐採できるものとできないものを規定している(→何は切り倒せて、何は切り倒してはいけないのかを決めている)厳格な規則があるにもかかわらず、インドネシアのジャングルの開墾の80%もが非合法に行われています。土地が切り開かれた後は、ヤシ油のために植林することができます。かつては森を住みかとしていた動植物たちにとって、これは悲劇です。ひとたび熱帯雨林がヤシの木に取って代わられれば、最初の整地作業のときに捕まったり、撃たれたりするのをかいくぐってきたその土地の固有種にとってさえまったく(存続の)希望がありません。結果は、オランウータンにとっても、他のたくさんの珍しい素晴らしい種にとっても悲惨なものになってきています。ヤシ油は、都会に暮らす人類にとってはたぶん将来の燃料なのでしょう。しかし同時に、悲しいことに、驚異の「森の人」がもはや生存できなくなるかもしれないのです。