わやくの部屋

ELEMENT 2 -Lesson 2

Stay Hungry, Stay Foolish
ハングリーでいよう、おバカでいよう

Section 1

世界で一番素晴らしい大学の1つの(→世界でも屈指の大学の)卒業式に、今日、みなさんと同席できて光栄です。今日は人生から学んだ3つのことをお話ししたいと思っています。それだけです。大したことではありません。たった3つの話です。

Section 2

最初の話は点をつなぐことについてです。私は、リード大学を最初の半年で中退しました。大学に何の利点も感じられなかったからです。人生で何をしたいのか、(人生の目標を)見いだすために大学がどんなふうに役立つのかまったくわからなかったのです。ですから大学を辞めることにしました。辞めたって、すべては大丈夫だと信じることにしたんです。当時は心細かったのですが、今、振り返ってみると、今までで一番いい決断の1つでした。中退した瞬間、つまらない必修の授業を受けるのはやめ、面白そうな講義には何にでもふらりと立ち寄り始められました(→面白そうな講義は何でも聴講しはじめられたのです)。

Section 3

カリグラフィーの講義をとることにしました。セリフとサンセリフの活字書体について学び、異なる文字の組み合わせの間の空間の量を変えること(→2つの活字の組み合わせに応じて文字の間隔を調節する方法)を身につけ、偉大な装丁を偉大にさせてくれているもの(→素晴らしい印刷物を仕上げる方法)について学びました。それは科学では説明のつかないような、美しくて、歴史があって、芸術的な深遠なものした。カリグラフィーには魅力があるとわかりました。

Section 4

こうしたものが、自分の人生で実際に役に立つなんて期待は、まったくありませんでした。でも10年後、最初のマッキントッシュ・コンピューターを設計しているときに、すべて甦ってきたんです。そして、すべてマックに組み込みました。もし中退してなんかいなかったら、あのカリグラフィーの講義にぶらりと立ち寄ったりはしていなかったことでしょうし、パソコンは、今のような素晴らしい印刷の体裁を持ってはいないでしょう。将来のことを考えて点をつなぐことはできません。過去を振り返りながら点をつなぐことができるだけです。ですから、どういうわけか、点は将来つながるもんだと信頼しなければいけません。

Section 5

2つ目の話は愛と敗北についてです。30になったときに、アップルをクビになりました。ひどいもんでしたが、自分がやってることをまだ愛していると気づきました。それで、もう1回やり直すことにしたんです。次の5年で、2つの会社を始めました。そのうちの1つは、今では、世界で一番成功しているアニメ制作会社ですし、もう1つは、物事の珍しい展開で(→何の巡り合わせか)、アップルが買収し、私はアップルに復帰したのです。

Section 6

私を前進させ続けたものは(→私を突き動かし続けていたものは)、自分がしていることを愛しているという事実だけでした。みなさんは自分で愛せるものを見つけなければいけません。どんな仕事をする場合であっても、仕事は人生の大きな部分を占めるでしょうから、本当に満足できるたった一つの方法は、素晴らしい仕事だと信じられるようなことをすることです。そして、素晴らしい仕事ができるたった一つの方法は、自分がやっていることを愛することです。もしまだ見つかっていないなら、探し続けてください。落ち着いてしまわないでください。

Section 7

3つ目の話は死についてです。1年くらい前に、お医者さんに、ガンだから3か月から半年しか生きられないだろうと告げられました。運がいいことに、手術を受けて、今でも元気です。この経験から今、次のことをみなさんに以前よりはもう少し強い確信を持って言えます――時間は限られています。ですから、誰か他の人の人生を生きて時間を無駄にしないでください。他人の意見という雑音に自分の内なる声をかき消させないでください。そして一番大切なのは、自分の心と直観に従う勇気を持つことです。心と直観は、本当は何になりたいのかを、どういうわけかもう既に知っているのです。他のものすべては、あまり大切ではありません。

Section 8

若い頃に、素晴らしい雑誌がありました。その雑誌の終刊号の裏表紙には「ハングリーでいよう、おバカでいよう」という言葉がありました。自分でもいつもそうありたいと望んできています。そして今、みなさんにそうあってほしいと願っています。

ハングリーでいよう、おバカでいよう。みなさん、どうもありがとう。