わやくの部屋

CROWN 2 -Lesson 7

Why Biomimicry?
なぜバイオミミクリーなのか?

We do not inherit the earth from our ancestors; we borrow it from our children. ―― Navajo proverb
大地はご先祖様から受け継いでいるのではない。子供たちから借りているのだ。――ナバホ族の言い伝え


科学技術のおかげで快適な生活が送れるようになっています。しかし、時として科学技術は自然界にダメージを与えることもあります。科学技術を紹介する作家(=サイエンス・ライター)のジャニン・ベニュスは、科学技術を自然に適合させる方法を提案しています。「バイオミミクリー」です。

Section 1

地球上の他のどんな生き物よりも人類は多くのものを成し遂げてきています(→人類は成功を収めてきています)。学校、大学、病院、銀行のような組織と同様に、飛行機、列車、コンピューター、携帯電話、医薬品、殺虫剤のような役に立つものをたくさん作りだしてきています。 こうしたものがなければ、現代の世界は存在しないでしょう。

こうしたもののおかげで、いたるところに旅行できたり、情報を素早く集めたり、独学できたり、病気を治療したりできます。しかし、作り上げてきたものが害を及ぼすこともありえます。殺虫剤は昆虫を殺しますが、土壌を汚染する可能性があります。車は必要ですが、二酸化炭素は地球温暖化の主な原因の一つなのかもしれません。

今、問わなければいけない質問は、次のようなものです。 もし仮に自然と調和して生きるとするなら、快適な生活様式は維持できるのでしょうか? 言い換えれば、どのようにすれば持続可能な生活を送ることができるのでしょうか?

Section 2

ジャニン・ベニュスはこの問いに対する答えは、インスピレーションを求めて自然に頼ることによって見つけられるかもしれないと提案しています。「バイオミミクリー」という言葉は「命」を意味する bio と、「模倣」を意味する mimesis から成り立っています。自然を模倣することによって自然に優しいかたちで生活する方法を見つけられるはずだと、ジャニンは言います。何と言っても、自然は38億年もの間、生命を支える環境を維持できているのですから。しかし、今やその環境が脅かされているのです。自然を観察し、自然からインスピレーションを得ようとすることによって、人類は環境を支える方法を学び取らなければいけません。ベニュスの考えでは自然は先生であり、お手本なのです。

自然について学ぶ、というよりはむしろ自然から学ぶようにひとたび努力すれば、驚きの気持ちを感じるかもしれないということを、ベニュスは思い出させてくれます。実際に、どんな種類の植物や動物でも、夢で思い描くことしかできないようなことをこなしているものです。トンボはどうでしょうか? トンボは一番早い飛行機よりもっと素早く動きます。ハチドリはどうでしょうか? ハチドリは3g未満の燃料で数百kmも飛べます。アリはどうでしょうか? 自分たちの体重の何倍もの重さのものを運べます。自然にダメージを与えないで、こうしたことをこなしているのです。

Section 3

ベニュスは解決策がないからではなく、正しい方向を見てきていないから、環境問題に直面していると信じています。実際に、インスピレーションを自然に求めることによって、たくさんの問題、特にデザインの分野で多くの問題を解決できるのです。

日本の技術者たちは、ある問題を抱えていました。新幹線の列車はトンネルに入るときに、とても大きな音をたてました。この問題を解決するために、技術者は水しぶきを上げないで水の中に飛び込む鳥のカワセミにアイディアを求めました。技術者は解決策を見つけました。(この2文の順序を変えて「この問題を解決するために、技術者はカワセミにアイディアを求めました。水しぶきを上げないで水の中に飛び込む鳥に解決策を見つけました」にしましょう。日本語に直すときには、この程度の自由は与えられていますから)新幹線の列車の先端部分を、カワセミのくちばしと同じような形に設計しました。

ジンバブエのハラレにあるイーストゲートセンターは、環境に優しい空調システムで有名です。この建物を設計した建築家は、シロアリの塚からアイディアを得ました。シロアリは塚にある小さな穴を開けたり閉めたりすることによって、生活空間を快適な温度に保っています。建築家はイーストゲートセンターでもよく似たシステムを使って、電気を節約したのです。

サメは地球上で一番古い生物の一つです。環境に完璧に適合しています。例えば、皮膚の模様は、バクテリアから身を守っています。科学者は、学校や病院のような場所でバクテリアから守るために壁にこれと同じ模様を使う方法を見つけ出しました。

Section 4

バイオミミクリーは自然をもっと意識するのに役立ち、それゆえ生活様式を変えさせてくれると、ベニュスは信じています。永遠に自然を利用し続けることはできませんし、ゴミを環境に捨て続けることもできません。

あまりにも長い間、技術革新が人類に役に立つものかどうか、あるいは、技術革新が儲かるかどうかという観点から、技術革新を判断してきています。何が地球全体にとっていいのかを第一に考えるべきで、また、それは人類にとってもいいものになるだろうと信頼すべきだと、ベニュスは提案しています。新しい設問は次のようなものでなければいけません。それ(=今、手元にある解決策)は調和するのか? 自然の中にこの(解決策の)お手本はあるのか? 地球と将来の世代にどのような犠牲を払わせることになりそうか?

バイオミミクリーは、人類の将来に大切な役割を演じることのできる強力な道具です。(人類が誕生して間もない)初めの間は、とても広い世界にほんの少ししか人類はいませんでした。今や、人口は急速に増えていて、環境に悪い影響を及ぼし始めています。ついには、次の問いに対する答えを探しています。「どのようにすれば母なる惑星を破壊しないで、住める(→住み続けられる)のか?」 バイオミミクリーは自然を見る新しい方法であるだけではなく、地球という惑星で生き続けるためのカギでもあると、ベニュスは信じています。地球上に住む方法を学ばなければ(→地球に住み続けられるような方法を身につけなければ)いけません。地球は家なのです。しかし人類だけの家ではありません。