わやくの部屋

CROWN 1 -Lesson 6


Roots & Shoots
ルーツ&シューツ

私にできることと言ったら、自ら物言わぬ者たちに代わって、私が声を上げることくらいです。
――ジェイン・グッドール

The last ( thing ) ( that ) I can do is to speak out for those ( = creatures = living things ) who ( = which ) cannot speak for themselves.

ジェイン・グッドールさんはイギリス生まれの研究者で、環境保護論者です。チンパンジーに関する研究で有名です。ここではケンジがジェイン・グッドールさんの人生と仕事についてインタビューしています。

Section 1

ケンジ : グッドール博士、このインタビューにお時間をさいていただきありがとうございます。アフリカでチンパンジーの研究に長年費やしていらっしゃることは存じ上げています。アフリカに行こうと最初にご決心なさったのはいつなのでしょうか?

ジェイン : ドリトル先生の本とターザンの本を読んだ後のことでした。11歳のとき、動物たちと一緒に生活し、動物たちを研究し、動物たちの本を書くためには何となくアフリカに行くもんだって知っていました。

ケンジ : いつか将来は動物たちと一緒に仕事をしたいと思っている若い人は、きっといっぱいいると思います。そういう人たちは、どのような準備をすればいいのでしょうか?

ジェイン : 動物を理解するためにできることはたくさんあります。動物をよく見て、行動を観察することがとても大切です。メモを取り、質問をすることもとても大切です。本当に強く決意していれば、道は見つかるものです。

Section 2

ケンジ : 野外調査をたくさん行い、野生のチンパンジーを観察なさいました。チンパンジーは何らかの形で人間と似ているのですか?

ジェイン : チンパンジーと人間には共通点がいっぱいあります。ヒトとチンパンジーのDNAは、ほんの1%をチョット超えるくらいしか違わないということが、今日知られています。チンパンジーの脳は私たちの脳ととてもよく似ていますし、行動のうちの多くの部分が私たちの行動と似ています。私たちと同じように、チンパンジーも子供のころに学ばなければならないことがいっぱいあります。チンパンジーの家族の構成員はとても親密で、よくお互いに助け合います。悲しみ、幸せ、恐怖、怒りを感じることもできます。

ケンジ : 性格面はどうでしょうか―。つまり、チンパンジーは友好的なのですか?それとも残虐なのですか?

ジェイン : 普段はお互いに友好的ですが、残虐になることもあります。ちょうど人間と同じですよ。

ケンジ : そうだったんですか?

ジェイン : オスのチンパンジーは自分の縄張りを見回って、時には他の群れから来たチンパンジーを攻撃することもあります。でも、とても優しく、愛情たっぷりなのも事実です。以前、メルと呼ばれるオスのチンパンジーが、3歳くらいのとき、母親を亡くし1人で取り残されたことがあります。メルは死んでしまう、と誰もが思いました。しかし、驚いたことに、スピンドルという名の12歳のオスのチンパンジーがメルの世話をしました。

ケンジ : どんなふうにでしょうか?

ジェイン : スピンドルはメルが背中に乗るのを許し、夜には寝床を分け合うことも許しました(→メルを背中に載せてあげ、夜には寝床を共にしました)。メルがおねだりすると、スピンドルが自分の食べ物を分けているのを見たことが何度もあります。チンパンジーは実は愛情深く、思いやりがあるんです。

Section 3

ケンジ : では、話題を環境問題に変えましょう。世界中を回って、自然保護について語っていらっしゃいます。これについてお話しをお願いします。

ジェイン : ええ、私たち人類は野生動物が生きる権利を持っていることを理解しなければいけません。野生の動物には野生の場所が必要です。その上、私たち自身のためにも、絶滅させてはいけない生物種もいるのです。人間の病気を治す多くの薬が植物や昆虫から作られています。野生地域を破壊するとき、ガンやその他の病気の治療方法を、知らず知らずのうちに破壊しているのかもしれません。

ケンジ : そうですね。

ジェイン : 自然の中にあるものはどれもがつながっています。植物も動物も命の全体模様を形作っているのです。もしもこの全体の模様を壊してしまえば、すべての種類のものが悪い方向に向かうことになります。

ケンジ : その点をもう少し詳しくお話しいただけますか?

ジェイン : ええ、いいですよ。ある時、イギリスでウサギが農家の穀物を荒らしていました。農家の方たちはウサギを病気にかからせて殺しました。そうすると、キツネは十分な食べ物がなくなって、農家の鶏を殺し始めました。農家の方たちは今度はキツネを殺しました。すると、ネズミの数が急に増えて、昔、ウサギが食い荒していたのとちょうど同じくらいたくさんの穀物を荒らしたのです。人類は環境を破壊し、それと共に自分自身をも破壊する危険にさらされています。

Section 4

ケンジ : というと、人類の将来について心配していらっしゃるのですか?

ジェイン : ええ、心配です。しかし、若い人たちに希望を持っています。若い人たちは、ひとたび環境問題を知れば、解決したくなると思います。ですから、ルーツ&シューツを始めることにしたわけです。

ケンジ : 何ですか、ルーツ&シューツって?

ジェイン : そうですね、ルーツ&シューツは、1991年、タンザニアの高校生のグループから始まりました。それはルーツ&シューツと呼ばれます。なぜならば、根は水に到達するために、岩を突き破って進むことができるからです。また、小さいけれども、新芽は日光に届くために壁を突き破ることができるからです。岩と壁は、人類が地球に引き起こしている問題のことです。

ケンジ : では、ルーツ&シューツは若者たちのクラブのような存在でしょうか?

ジェイン : ええその通りです。今では世界中にグループがあり、どのグループも次の3つの中のいずれかの計画を選びます。ヒトを助ける計画、動物を守る計画、環境を守る計画です。例えば悲しんでいる人が笑うきっかけになれたり、ワンちゃんにシッポを振ってもらえたり、水をほしがっている植物に水をあげられれば、世界は今よりよい場所になります。それこそがルーツ&シューツがやっていることのすべてです。

ケンジ : では、最後にお話しをお願いできますでしょうか?

ジェイン : ヒトとチンパンジーの間の一番大切な違いは、私たちは口が利けて、考えを共有できるということです。あなた方一人ひとりが果たすべき役割を持っていて、世界をより良い方向に変えていくことができます。君は1人の人にすぎませんが、たった1人の人間でも、1人の行動が世界全体に影響を与る可能性があるのです。さらに選択することがでじゅるのです。何を買うべきか? 何を食べるべきか? 何を着るべきか? 1人が成し遂げる変化は小さいかもしれませんが、もし千人、それから百万人、ついには十億人がみんな少しずつ小さな変化を成し遂げれば、これは大きな変化になるでしょう。

ケンジ : グッドール博士、お時間をさいていただき、そしてお考えを共有して頂きありがとうございました。