苔の衣

現代語訳

深草の帝と申し上げた帝の御代は、良少将という人がたいそう時めいている時であった。少将はたいそう色好みだった。 少将は世間からなにをやってもよくおできになる人と思われ、お仕えもうしあげる帝も、この上もなくお目をおかけになっておいでだったのだが、この帝が崩御なされた。御大葬の夜、御供にすべての人が奉仕しているうちに、この少将はいなくなってしまった。