わやくの部屋

PRO-VISION 3 -Lesson 3

Running Out of Water
水を使い果たす

When the well is dry, we know the worth of water. ―― Benjamin Franklin
井戸がかれると、(やっと)水の価値がわかる。 ―― ベンジャミン・フランクリン

Section 1

水と石油では、私たちの社会を動かす点でどちらの方が必要不可欠なのでしょうか? 歯磨きから芝生の水やりまで、ウシを育てることからエネルギーを作ることまで、私たちの社会は決定的に水に依存しています。合衆国にいて、私たちは運がいいのです――蛇口をひねれば、きれいな水がすぐに出てきますし、透明です、しかも比較的安い値段です。しかし、ご存知かどうかわかりませんが、君の生活と君の子孫たちの生活のあらゆる局面にも影響を与える差し迫った水危機があります。

時折ある乾期より深刻な干ばつに近ごろ苦しんでいる地域が、合衆国内にも、あるいは、世界の遠く離れた場所にもあるということについて耳にしたことがあるかもしれません。川が――ひょっとして、君自身が飲んでいる水源でさえ――上流の農場や工場から流れ出る雨水でひどく汚染されているということを読んだことがあるかもしれません。しかし、私たちは、きれいな水が手に入ることを当たり前だと考える傾向があります。蛇口をひねるとき、トイレを流したり、シャワーを浴びたりするとき、あるいは、食料雑貨類を買ったり、ハンバーガーを食べたり、牛乳を一杯飲んだりするとき、実際には、ものすごく貴重な資源、すなわち水を使っているという考えは、決して浮かんできません。地球上にある水の量には限りがあります。水を使い果たすことは、一人ひとりにとって、そして、あらゆるものにとってとても不幸な結果を招くことになるでしょう。

実際に、水の需要と供給の間には、ますます広がっていく格差があります。1900年と2000年の間に、世界の人口は3倍に増えましたが、水の使用量は6倍に増えました。石油の消費量も人口増加より速いペースで増えてきていますが、水と石油の間には大きな違いがあります。石油の代替物は発見され始めていますが、水に代わる物はひとつもないのです。

Section 2

どのくらいひどく水が必要なのでしょうか? 実際にどのくらいたくさん使っているのでしょうか? この答えはびっくりするものになるかもしれません。そうです、飲料、お風呂、トイレのような毎日の家庭の機能を果たすために水が必要です。合衆国では、基本的な家庭の機能のために、1日1人当たり平均約100ガロン(378.5L) 使います。しかし、この100ガロンは、実際の「ウォーターフットプリント」のほんの一部分を表わしているにすぎません。ウォーターフットプリントというのは、消費者と製造者によって直接あるいは間接的に使われる真水の総量のことです。私たちが使う水のほとんどは、野菜でも、穀物でも、お肉でも、食べるものを作る際に費やされます。合衆国では、合計のウォーターフットプリントは、1日1人当たり1,800ガロン(6,813L)になります。これは先進世界の数字の1.5倍、世界の平均の2倍です。特に先進国は莫大な量の水を使います。

下の図が示すように、地球上の水の量は一定のままです。この図で、蒸発、凝縮、降雨という水の循環が見て取れます。水の形が変化しますが、合計した量は同じままです。地球の水循環によれば、水全体の1%未満しか真水として利用できません。97%近くの水が海洋にあり、3%が真水です。しかし、真水のうちのほとんどは氷や氷河に閉じ込められていて利用できません。

水循環が示しているように、水には限りがあります。もし水を(今)使っている方法を変えなければ、水は21世紀の「石油」になるでしょう。水に関する難しい状況は、石油の状況よりもさらに危機な状況です。水がなければ、生命は維持できません。

Section 3

私たちは、地球の他国の67億人の住民(訳者注:教科書の本文の元になった本が出版されたのは2010年8月です。2010年での世界の人口は約69億人で、米国は約2.9億人でした。さらに大雑把に計算して、70億―3億=67億人が米国以外の世界の人口になります。よって、ここで筆者が the other 6.7 billion inhabitants of our planet と言っているのは自国=米国を除いた世界の人口だと考えられます。本文執筆当時の世界の人口が67億人だというのではありません)と分かち合うための真水のうちのほんの少量を持っているだけです――地球上で利用できる水全体の1%未満です。水の量は決して変わらない一方で、――水の量は先史時代からずっと変わってはいないのです――水を必要とする人の数は絶えず増え続けています。世界の人口は2025年までには、80億人を越えているだろうと予想されています。

地球の人口増加に加えて、生活水準は同時に、広い範囲で高まってきています。このことが水の消費を増やしています。豊かさが消費を押し上げ、合衆国は世界一大きなウォーターフットプリントを持つ流れの先頭に立ち続けています。中国とインドの高学歴、高収入の人たちが中流階級に上がっていくにつれて、ウォーターフットプリントも増えていきます。

たとえ、現在の人口レベルだとしても、私たちは水供給不足に直面しています。世界中で、水問題は厳しさの点で多岐にわたっています。合衆国の36州は何らかの水供給問題を抱えています。ほとんどまったく安全な飲み水を利用できない地域も世界にはあります。

Section 4

私たちは、増加している人口の需要(→増え続ける人の必要を満たすために要求される水の量)と少なくなっていく水資源の間の衝突進路上にいることを知っています。私たち人類はこの衝突をうまく処理できるのでしょうか? ある島国が、いくつかの可能性のある答えを示しています。

シンガポールは、500万を超える人たちが経済成長を続けながら暮らしている国です。しかし、国民は比較的裕福ですが、国は常に水不足です。自国の水供給の40%を提供するために、シンガポールはマレーシアから水を輸入せざるを得ません。シンガポールは隣国に大きく依存しています。そんなわけで、他のほとんどの水公共事業体や自治体(政府)よりずっと先んじて、シンガポールは1970年代に排水の再利用の可能性を模索し始めました。現在では、シンガポールには4か所の水再生工場があります。この4か所で排水をリサイクルして、ハイテク産業用の水と飲み水を作っています。浄化された排水はニューウォーターと呼ばれています。2012年に、ニューウォーターはシンガポールの全水需要の30%を満たしました――高品質の再生水のうちのほとんどが産業用に使われ、少しの割合が水道水として消費者に供給されました。2060年までに、ニューウォーターがシンガポールの将来の水需要の50%を満たすことが計画されています。

排水をリサイクルする他に、もう一つの方法、すなわち、塩水を真水にすることによって水の供給を増やす方法が水不足の解決策のとても大切な一部になることでしょう。世界の水の97%が塩水です。新しい、より低価格の海水淡水化施設があれば、海岸部の人口密集地への真水の供給を拡大できるでしょう。新しい、もっと経済的な技術を使う大規模な海水淡水化施設が、シンガポールと合衆国で作られています。

水問題を解決することは簡単ではないでしょうが、もし水を貴重な資源だと考えて、今よりも賢く水を使えば、解決に成功できます。私たちの関与は、未来の世代に十分な水があることを確実にするために必要なのです(→私たちが参加することが、未来世代に水を十分に確保するために必要なのです)。